そうこうしてるうちに年が変わった。
新年を迎えてもまだ新しい仕事は見つからない。
豆腐屋が、どうしようかと悩んでいるところに来客がやってくる。
豆腐屋が出るとその男は、「10両預かってきたから、しばらくこれで繋いでくれ。」と言って10両渡し、帰っていった。
不審に思いながらも、現実には喉から手が出るほど欲しい。
ツケの溜まったところもある。
ちょっとだけ使おう、と言いながら使っているうちにどんどんどんどんお金は減っていく。
しばらくすると、またあの男がやってきた。
豆腐屋は、「使ってしまって返せない」というと、その男は、「その事ならあのお方に」と言って玄関に向かって呼びかける。
戸が開いて立派な身なりの男が入ってくる。
「お久し振りでございます。」
豆腐屋もあまりの様子の変化に初めは気付かなかったが、間違いない。
おからをあげていた学者先生だ。
話を聞くと、あのすぐ後、将軍家お側用人柳沢吉保に召し抱えられることになり、屋敷に退き移ったという。
火事にあったことも知ってはいたが、度重なる公儀の用に見舞いに来ることも出来ず、仕方なく出入りの鳶の頭に10両を渡し、そして、頼んでおいた新しい店がようやく出来上がったので迎えにきたと言う。
新しい店に行くと、豆腐を作る道具がずらっと並んでいる。
学者先生が帰ったあと、豆腐屋は新しい店が嬉しくて、豆腐を作った。
新しい店で初めて出来た一丁を、学者先生に持っていく。
学者先生は待ちわびた豆腐を食べると、豆腐屋に頼みがあると言う。
豆腐屋が、「なんでも聞きます」と言うと、豆腐屋の親類に加えてくれと言う。
実はこの学者先生は、将軍にも意見ができると言われる程の儒学者になった荻生徂徠。
そんな人の親類に、一般商人の豆腐屋がなれるわけがないと断ると、荻生徂徠は言う。
「あなたのお陰で今の自分がある」と。
はい、長くなりましたが、あらすじはこの辺りで。
ここからサゲに入るわけですが、また次の機会にぜひ観にきてくださいませ。
とにかくワタクシはこの話が好きで、何度聴いても目頭が熱くなるのです。
まだまだ全く表現出来てはおりませんが、いつかは自信を持って演じられるように精進したいと思います。
どうぞよろしくお願い致します。