渡辺優子さんの「365日。」を受け入れられるかどうかで、自分の心の状態が見えると思うのです。

本日は読書会でございました。

もう四十六回目ということなので、ほぼ四年続いているんですね。

この間いろいろな方が参加してくださいましたが、ここ一年くらいはお馴染みの顔になってきて、参加される方たちが旧友と話すように毎回楽しそうに笑っている顔を見ると、

「ああ、続けてきて良かったなあ。」

と、しみじみと思うのでございます。

ワタクシも最初から最後まで参加したいのですが、ここのところベーグルやスイーツの仕込みが増えたこともあり抜けることが多くなりました。

最近は参加者の方たちが、順番に仕切りを回して進めてくださるので、ワタクシも心置きなく席を外して仕込みをしたりしております。

 

最後の方で少し参加できまして、その時紹介されていた本が、料理研究家の渡辺優子さんの、

 

「365日。:小さなレシピと日々のこと。」

でございました。

 

タイトル通り、渡辺優子さんの暮らしを、一日一ページ、写真と文章で365日綴った本。

素朴で上質で、丁寧な暮らしをされていることが分かる本です。

その本を紹介してくれた女性も、普段のSNSの投稿を見ていると、渡辺優子さん同様、上質で丁寧に生活されている方という認識でございました。

しかしお話を聞いてみると現在はそうですが、学生時代はそうではなかったそうなのです。

 

大学卒業後は、働いて欲しいという親の希望を押しきり、研究者を目指して大学院へ。

親の援助がない彼女は、極度の節約した生活を強いられます。

空腹を満たすのはパスタやご飯。

ほとんど売れない芸人のような食生活ですな。

余談ですが、貧しい人は痩せているイメージですが、実際はコストの安いパスタやご飯といった炭水化物で空腹を満たすので太っていることが多いそうです。

(あ、誤解がないように言っておきますが、この女性はスラッとした美人ですよ。)

 

そんな彼女、同年代の女性を見ると、好きな物を買って好きな物を食べてキラキラしている。

彼女はデパートで化粧品を買ったことが無ければ、ランチなんて言葉も知らなかったそう。(ランチくらいは知ってそうだなと思ったけれどもこの場では言いませんでした。)

いつしか羨望の感情が、嫉妬、妬みへと変わっていったのは想像に難くありません。

そんな彼女ですから、渡辺優子さんのようなキラキラした人が書いた本なんぞ読むわけがありません。

きっと本屋でそんなような本を見かけた時は、睨み付け、罵詈雑言を投げ掛け、胸の中にはどす黒い感情が渦巻いていたことでしょう。

 

それを聞いた時に、ワタクシは思わず「わかるー!」と唸ってしまいました。

そう、ワタクシも幼少の頃からキラキラした生活などとは縁遠い生活を送ってきました。

ワタクシの場合は、彼女のように大学院に行くどころか、大学すら行っておりません。

いや、行かせてもらえない、という方が正しい。

しかしワタクシは、悲しいかなこの世の中にキラキラした生活が存在するとは知りませんでした。

自分の今置かれている環境が正に今の自分の徳を表している訳で、キラキラした生活を知らなかったということは、その時の自分がどぶねずみのような環境で生きていた、ということになるわけです。

 

彼女に話を戻します。

この辺りは詳しく語られておりませんのでざくっと話しますと(ワタクシの勝手な解釈がここから入ってきますので半分フィクションだと思ってくださいね。)、彼女は大学院を出て、しばらくしてから結婚したと思います。

結婚して、何度か引っ越しをしても、彼女のキラキラした人への憎しみ、妬み、どす黒い感情は無くなることは無かった。

 

きっと大好きな「ブレンズ」を観ても癒されることはなかったのでしょう。

 

しかしある時、引っ越しをきっかけにオーブンを買うんです。

そしてそれをきっかけに、料理をするようになる。

ある日彼女は本屋へ行く。

そこでたまたま目にしたキラキラ本、渡辺優子さんの「365日」。

いや、もしかしたら料理のレシピ本を探しに行った時に目にしたのかもしれない、とにかく彼女の目の中に渡辺優子さんの「365。」が入ってきた。

 

オーブンを手にする前であれば、きっとまた唾を吐きかけていたでしょう。

しかしオーブンを手にしたことで彼女のなかで何かが変化していた。

彼女の料理への好奇心が、あの忌み嫌っていたキラキラした生活を描いた本への嫌悪感を凌駕したのだ。

彼女は手にし、会計を済ませ家に帰る。

本を開く。

今までの自分の価値観に無かった世界が、そこには描かれていた。

シンプルで素朴で、でも丁寧で上質な生活。

 

目に留まったのは、渡辺優子さんが9月17日に作っていたサラダ。

 

流石に料理研究家、使われている材料が、ブルーチーズにバルサミコ酢。

きっと高尚で、想像も出来ない味わいなのだろう。

ちょっとひねくれた彼女は、「料理研究家だから無理にこんな材料使ってるんだ!」とか思ったかもしれない。

 

ただ、彼女は無性に気になった。

どんな味がするんだろう。

食べてみたい!と、いてもたってもいられなくなって、すぐさま近所のアミカに飛んでいったに違いない。

 

そして作った。

バルサミコ酢なんて初めて使った。

レシピを見ながら一生懸命作った。

 

出来上がったサラダを見て一呼吸。

 

食べてみる。

 

ブルーチーズとバルサミコ酢、こんな材料使うなんて想像したことなかったけど、なんて美味しいんだろう!

彼女は心は新しい価値観に触れて、ふわふわと踊っていたに違いない。

 

だけど、同時に思った。

 

「もちろんめちゃくちゃ美味しいんだけど、もっともっと高尚な味がして、もっともっと想像を越える味だと思ってた。でも、そんなに肩肘を張った料理じゃない。

きっと渡辺優子さんは、特別な日に食べるとかそんなのじゃなくて、もっと普通の生活の中でこういうものを食べているんだ。」と。

そして、自分もこういう生活をしたいと、素直に思った。

 

彼女はこの時に思ったのでしょう。

自分の価値観で世の中を見ることがいかにつまらないことかを。

自分の当たり前が、他人の当たり前ではない。そう思って受け入れることで、とんでもなく世界は広がるのだと。

 

そうなんです。

これはワタクシも強く共感しました。

ワタクシはホントに最近まで、自分の価値観に縛られて視野を狭めていたのです。

ある時気づいたんですが、それはほんの1、2年前。

その狭い了見を棄てて新しいことを始めたら、急に世界が広がって、生きることが楽しくなってきたんです。

 

誰かが言ってました。

自分を変えたければ、小さなことでもいい、新しいことを始める。

いつも飲んでる野菜ジュースを、伊藤園の「充実野菜 国産100%」からカゴメの「野菜1日これ一本」に変えるだけでもいい、いつもは「コメダ珈琲店」に行っちゃうところ、「ケディバシュカン」に行ってみるだけでもいい。

いきなり大きく変えようとしなくていい、小さな簡単な変化から始めればいいのだ。

 

彼女は、ただオーブンを買っただけで、過去のぐちゃぐちゃして卑屈だった日々を、キラキラした日常に変えたのだ。

 

ワタクシもちょっと思考を変えただけ。

 

ほんの些細なことで、人は大きく変われる。

逆を言えば、行動しなければまったく変わらないし、マイナスの思考であれば、人はそのようになっていく。

 

人生、誰でも良いことばかりではない。

どんなに輝いて見える人でも、とんでもない苦労をしているでしょう。

しかし腐らずに前を向いていくことで、きっと人生は、どれだけでも豊かにしていくことが出来る。

 

彼女の本の紹介を見て、こんなことをふと思った大橋亭でございました。

 

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